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麻酔科マニュアル(プロトコル)

人工呼吸からのウィーニング

人工呼吸からの離脱の遅れはICU滞在日数の延長やコスト増加だけでなく,人工呼吸管理に伴う肺炎や気道損傷を起こす。 しかし早まったウィーニングでは呼吸筋の疲労などに伴う呼吸状態の悪化により再挿管となる可能性もある。再挿管された場合の死亡率は30~40%にもなる。 再挿管による院内感染性肺炎は8倍の確率で引き起こされ,その死亡率は6~10倍に上昇する1。 一方で慎重すぎても不必要に人工呼吸管理を長引かせ(離脱に費やす時間は,全人工呼吸装着時間の42%にもなるという), 合併症のリスクを増加させてしまう。よって適切な時期に離脱を行う必要がある。


離脱の適切な時期の決定に関するガイドライン作成のために,人工呼吸器のウィーニングに関する膨大なデータを収集分析したのが, The Agency for Healthcare Policy and Reseach(AHCPR)である。それと同時期に,The American College of Chest Physicians, the American Association for Respiratory Care; and the American College of Critical Care Medicine.らがチームを組みガイドライン を作成するに至った2。このガイドラインを参考とし,当院での人工呼吸離脱のプロトコールを以下に示す。


1. ’呼吸器依存’(24時間以上の装着時間を必要とし,ウィーニングが進まず呼吸器から離脱できない状態)の原因をすべて探り, この原因を拮抗することが重要である。
#原因は肺そのものの障害だけではない!


2.人工呼吸に至った根本的な原因が解決し,次の基準を満たせばウィーニングを開始する。鎮静薬を中止し,自発呼吸を回復させる。
#ただし慢性呼吸不全患者の急性増悪および先天性心疾患の患者のウィーニングには一般的でない。


3.自発呼吸トライアル(SBT)はCPAP法 5cmH2O,あるいはPSV法 5~7cmH2Oとする。 SBTに約1時間耐えられるようであれば,抜管を考慮する。
呼吸筋疲労に伴う頻呼吸などはSBTの初期に起こる(30分以内) ので開始後数分間は注意深く観察し中止の判断をする。無駄にSBTを続けることは呼吸筋に負担をかけしまう。

SBTに耐えられる/成功を示す客観的データ

ガス交換が適切にできる:SpO2≧85~90% ; PaO2≧50~60mmHg ; pH≧7.32 ; PaCO2の上昇が10mmHg以下
血行動態の安定:HR<120~140回/分,心拍数が20%以上変化しない,収縮期血圧が180~200以下で90以上,血圧が20%以上変化しない,昇圧薬の必要がない
安定した呼吸パターン:RR30~35回/分,呼吸回数が50%以上変化しない
RSBI 60~105であること
#RSBI : rapid shallow breathing index(=f/Vt ratio) 呼吸数(回/分)/一回換気量(リットル)

主観的評価

精神状態の変化:傾眠,昏睡,興奮,不安感が出現しない
不快感,またはその増悪がない
著名な発汗が起こらない
増加した呼吸仕事量の徴候:呼吸補助筋の使用,奇異性呼吸とならない


4. 離脱に成功した患者の抜管は,気道確保の必要性があるか,患者自身に気道確保能力があるかどうかを判断してから行う。


5.耐えられない場合は当日は再び人工呼吸管理とし,24時間後に再度,2の評価をする。24時間後に条件を満たせば,SBTに再挑戦する。
いったん疲弊した呼吸筋筋力が回復するには24時間以上かかることから,一日に何度もSBTを行って抜管の評価をすることは呼吸筋に過度のストレスを加えて 損傷させてしまう可能性があり推奨されない。

なお,NPPVを気管挿管による人工呼吸からの離脱に利用する方法は中等度~強いエビデンスとして認識されている4。 離脱開始の基準は満たしているが,SBTを行うと呼吸状態が悪化し,繰り返し呼吸器を再装着しなければならないような場合,NPPVが効果を発揮する。 Weaning failureの原因である呼吸筋疲労,コンプライアンスの減少,気道抵抗の増加などにはNPPVにより対処可能である。NPPVを使用し早く抜管した方が 患者の予後がよいとする報告が出てきており56,NPPVが適応できる患者に はこれまでの抜管基準より緩い基準で,より早い時期に抜管を行うことができるようになると思われる。

  • 1Torres A, Serra-Batlles J, Ros E, Piera C, Puig de la Bellacasa J, Cobos A, Lomena F, Rodriguez-Roisin R. Pulmonary aspiration of gastric contents in patients receiving mechanical ventilation: the effect of body position. Ann Intern Med. 1992 Apr 1;116(7):540-3

  • 2MacIntyre NR, Cook DJ, Ely EW Jr, Epstein SK, Fink JB, Heffner JE, Hess D, Hubmayer RD, Scheinhorn DJ; American College of Chest Physicians; American Association for Respiratory Care; American College of Critical Care Medicine. Evidence-based guidelines for weaning and discontinuing ventilatory support: a collective task force facilitated by the American College of Chest Physicians; the American Association for Respiratory Care; and the American College of Critical Care Medicine. Chest. 2001 Dec;120(6 Suppl):375S-95S. Review. No abstract available.

  • 3Ely EW, Meade MO, Haponik EF, Kollef MH, Cook DJ, Guyatt GH, Stoller JK. Mechanical ventilator weaning protocols driven by nonphysician health-care professionals: evidence-based clinical practice guidelines. Chest. 2001 Dec;120(6 Suppl):454S-63S. Review.

  • 4Liesching T, Kwok H, Hill NS. Acute applications of noninvasive positive pressure ventilation. Chest. 2003 Aug;124(2):699-713. Review.

  • 5Nava S, Ambrosino N, Clini E, Prato M, Orlando G, Vitacca M, Brigada P, Fracchia C, Rubini F. Noninvasive mechanical ventilation in the weaning of patients with respiratory failure due to chronic obstructive pulmonary disease. A randomized, controlled trial. Ann Intern Med. 1998 May 1;128(9):721-8.

  • 6Ferrer M, Esquinas A, Arancibia F, Bauer TT, Gonzalez G, Carrillo A, Rodriguez-Roisin R, Torres A. Noninvasive ventilation during persistent weaning failure: a randomized controlled trial. Am J Respir Crit Care Med. 2003 Jul 1;168(1):70-6.